批評の芸術係数

批評というより感想録です。

"ゴッホ最期の手紙"(2017) -映画短評-

 

 2017年、ドロタ・コビエラ、ヒュー・ウェルチマン監督

2018年2月16日、下高井戸シネマで鑑賞

初見。

 

 とにかく映像が凄まじい。秒間12枚、総数6万枚以上の絵画からなるアニメーションは圧巻。一枚一枚がゴッホ風のタッチの絵であり、秒間24コマのいわゆるフルアニメーションではないというのもあって、とにかく「絵が動いている」という印象を受ける。そして何よりもゴッホのあの絵が動いている!という感動。ゴッホに詳しくない人でも"星月夜"や"夜のカフェテラス"くらいは知っているだろうし、これを見るためだけにでも行って損はしない。

 ジブリ作品をはじめとしたフルアニメーションはもちろん、コマ数を制限したリミテッドアニメーションや、さらには漫画でさえもが「動き」を重視して発展してきた日本の、少なくとも主流の、アニメ表現に対して、絵の連続であることを強く意識させるという点では、むしろアメコミに近いものを感じ、そういう点で漫画アニメ文化を比較するのも面白いかもしれない。(ヨーロッパ作品であるからバンドデシネなどを挙げるのが妥当なのかもしれないが、僕自身がほとんどそれに触れたことがないのでここでは割愛。)

 ストーリーはサスペンスであり、また主人公の成長譚でもある。薄味だが上質な感じ。描いている内容も人生の主観的客観的価値を問いかけるものであり、ゴッホを主題にこれを描くというのも味わい深い。

 全体を通しての見所はやはり冒頭のアニメーションと最後の手紙のシーンだろうか。正直一回では味わい尽くすことはできない映画。商品化されたら買います。

 

 非常におすすめできる作品。アニメファンやゴッホファンは問答無用で見に行くべきだし、なんとなく疲れていくときに観ると勇気づけてもらえる映画だと思う。